光陽国際特許事務所
弁理士数Top33の大規模特許事務所が推し進めるAI化
事務所紹介
帝国ホテルの正面に位置する絶好のロケーション、眼下に日比谷公園を一望する高層フロア、ハイセンスなインテリアに包まれた贅沢な空間。
光陽国際特許事務所様は、総勢90人を抱え、弁理士数Top33位(2025年2月現在)に数えられる、日本を代表する特許事務所の一角を占められておられます。
特許を取扱業務の中心とされておられますが、商標業務についても、弁理士4名、補助者4名を配しておられます。
日本を代表する大規模特許事務所からみたAIの今、AIに対する取り組みについて突っ込んだお話をいただきました。
是非ご一読ください。

藤田 康文 先生(左) 荒船 博司 先生(右)
事務所、所長について
(IP-RoBo)所長である荒船先生が弁理士を目指されたきっかけはなんだったのでしょうか。
(荒船)大学卒業後企業に就職し3年程エンジンの設計をしていましたが、ちょっとしたきっかけで出版会社を立ち上げ、3年で年商3億5千万円にまで成長させました。
しかし、順調に会社を成長させることはできましたが、理系出身であることを考えると、これでよいのかと考えるようになりました。友人から弁理士という資格があることを聞いた時にこれだとひらめき、出版会社は知人に譲り、弁理士を目指すことにしました。
(IP-RoBo)3年で年商3億5千万円とは凄い経営手腕ですね。しかも順調に成長中の会社を知人に譲って弁理士を目指す決断力も驚きです。弁理士合格後、すぐに事務所を設立したのでしょうか。
(荒船)2年程勤務弁理士を経てから、大学の友人であった大日方が先に設立していた事務所に合流しました。
最初は大日方と共同経営という形にしていましたが、私の方が経営に向いているということになり、途中から私が所長に、大日方が副所長になりました。

(IP-RoBo)所長になられた際、どのような事務所にしようと考えられたのでしょうか。
(荒船)常に誠実に仕事を行い、顧客満足度の向上を目指し、日本を代表するような大きな事務所にしようと考えました。
そのためには、弁理士をはじめとする事務所員の能力を高水準に保つことを徹底しました。
具体的には、採用した所員は、すぐに一人で業務をさせるのではなく5年間の教育期間をしっかりと設け、ベテラン所員のもとで修業させています。
また、クライアントからの依頼には、一人で対応するのではなく、案件ごとに複数人からなるチームを作り、様々な視点から検討することで質の高い仕事をできるようにしています。
更に、クライアントには、事務所だけでなく各担当者についての評価もいただくことをお願いしています。このことにより、各所員が責任とやりがいをもって仕事にあたることを意識させるようにしています。
(IP-RoBo)商標業務の経営方針はどのようなものでしょうか。
(荒船)これまでは特許業務を中心に業務拡大を目指してきましたので、現在の業務の95%は大手企業の特許業務となっています。
今のところ、商標業務は、特許業務の既存クライアントからの依頼がほとんどですが、今後は全くの新規顧客を、大企業か中小かに関係なく増やしていく必要があると考えています。
弁理士4名と補助者4名を商標業務専任として配属していますが、中小企業も含めた新規顧客に対応していくためにはリソース不足が懸念されます。今後の業務拡大に対応するために、AI化やDX化を積極的に推進し、高品質を維持したまま効率化することを推し進めたいと考えています。
AI活用について
(IP-RoBo)AI化を推進されるとのことですが、弁理士業務にとってAIは脅威であるかのように言われることもあります。
AIと弁理士業務の関係について、どのようにお考えですか。
(荒船)私はAIが脅威であるなどということは全く心配していません。
既に、業務のAI化を進めていますが、特許業務に関しては10%程度の効率化にとどまっています。今後AIが進化したとしてもせいぜい50%を代替できるところに留まるのではないかと感じています。将来的にも、半分はやはりわれわれ専門家が直接やらなければならないと思います。
ただ、50%くらいまでは代替可能性があり、現実に効率化も図れていますので、AIについても積極的に導入し、AIと人を適材適所で使い分けていくことが重要だと考えています。
(IP-RoBo)商標業務では、TM-RoBoを導入いただき、AI化を推進いただいているかと思います。
TM-RoBoの導入を検討された経緯を教えていただけますか。
(荒船)ダイレクトメールで初めてTM-RoBoを知りました。
同封されていたパンフレットを見たところ、TM-RoBoを導入することで、商標チームに更なる客観性と効率化を与えてくれるのではないかと直感しました。
といいますのも、商標業務では、類否関係の判断がとても重要ですが、他方で大変手間がかかります。
類否判断が微妙なケースもあり、判断に悩むこともあります。
TM-RoBoは、類否関係についても強力にサポートしてくれることがわかりましたので、とてもよいと感じました。
そこで、DMを受け取った段階で導入することをほぼ決めていましたが、念のため商標担当の藤田弁理士にTM-RoBoがどの程度使えるか検討するように指示しました。
TM-RoBo導入検討について
(IP-RoBo)荒船先生からのご指示で藤田先生がTM-RoBoのトライアルと検討をいただいたかと思います。検討されるにあたって何を重視されたのでしょうか。
(藤田)AIに対して私も抵抗はなかったのですが、それまではJ-PlatPatをメインで使って調査していましたので、J-PlatPatとの違いを一番気にしてトライアルを行いました。また、それまでの調査は荒船からあったように類否判断を中心に調査に時間がかかるという問題意識があったので、どれくらい早く調査できるかも気にして調査しました。
(IP-RoBo)実際にトライアルをしていただいて、どうでしたか。
(藤田)TM-RoBoで出力される類否統計指標は、自分の感覚とほぼ同じでした。ごくたまに自分の感覚と若干ずれた数値がでることがありますが、再検討するきっかけになりましたので、このような場合も有益でした。
更に、数値順、つまり似てる順に並び替える機能は、調査を早くしてくれるものであり、十分使えると感じました。
また、TM-RoBoでヒットする商標そのものは、J-PlatPatで検索した場合と違いはなかったので、抜け漏れの心配がなく、この点からも安心できました。
商標検索機能もユニークでいい機能だと感じました。
全体的に入力がシンプルで使いやすい点も好印象でした。

導入後の活用方法について
(IP-RoBo)導入後、具体的にTM-RoBoをどのように利用されていますか。
(藤田)弁理士、補助者ともに、調査依頼の全件でTM-RoBoを原則として利用しています。
私の使い方としては、算出される全ての数値を参考にしていますが、特にヒット商標の類否判断で、類否統計指標をフルに利用しています。
並び替えた上から順に、数値を参考にして、順番に類否判断をしています。
数値があることで早く判断できるだけでなく、自分の感覚とTM-RoBoの数値のダブルチェックができるのがとても助かっています。
類否統計指標50%以下のものは、基本的に非類似として処理しています。
急ぎの案件の場合は、TM-RoBoの調査結果を原則採用することで、大幅な時間短縮が可能となっています。
(IP-RoBo)TM-RoBoを利用されて特によいと感じたところはどこですか。
(藤田)商標検索機能では、結合商標を入力すると網羅的に組合せ語をリストアップし、類似する登録例があるか自動で調査してくれますので、これまでは気づかなかった組合せ語についてももれなく簡単に調査してくれるところが本当によいと思います。

導入効果について
(IP-RoBo)TM-RoBoを導入された効果はいかがですか。
(藤田)まず、調査が効率化され、調査時間が大幅に短縮されました。
具体的には、通常調査の場合、これまでは補助者による調査、報告書作成、弁理士の最終確認と再調査に、1件あたり合計5~10時間かかっていましたが、3割程度は削減できました。
急ぎの案件について行う簡易調査にいたっては、半分程度に短縮できました。
また、J-PlatPatでは、似ているもの、重要なものが下の方にあることが珍しくなく、見落としの危険性がありましたが、TM-RoBoではそのようなことはなくしっかり上位に挙がってくるので、調査の質を引き上げてくれています。
TM-RoBoの出力した数値をクライアントにお見せすることもあり、調査の客観性担保にも役立ってくれています。
(IP-RoBo)効率化は何をもたらしてくれましたか。
(藤田)これまで以上にきめ細かい調査報告を行うことができるようになりましたし、急ぎの依頼にも迅速に対応することが可能になりました。
また、補助者の教育を行う時間もこれまで以上に確保できるようになりました。
TM-RoBoによる効率化は、商標業務全体の質を高めてくれたと実感しています。
(IP-RoBo)TM-RoBoを導入されたことを公表されておられますが、どういったお考えで公表されたのでしょうか。
(荒船)事務所報である光陽通信等で公表しましたが、公表することにより、他の事務所との差別化を図れると考えました。
特許事務所での商標調査は、専門家によるものとはいえ、個人的な技量が調査の質を大きく左右していることは否定できません。
しかし、AIツールの導入により調査者の技量に左右されずに客観的な判断を行うことが可能となりますので、そのことを強くアピールできると考えました。
また、先端的なAIツールを導入している先進的な事務所であることをアピールできる点も大きいと考えました。

最後に
(荒船)効率化と客観的判断の確保、そのためには先進的なツールを積極的に利用することが重要だと考えています。
当事務所では、事務作業を始め、特許や商標の調査ツールとしてもAIを積極的に導入しています。TM-RoBoは、商標調査ツールとしては当事務所ではもはやなくてはならない存在になっています。
(藤田)TM-RoBoは、客観的な指標を出してくれるだけでなく、類似順に正確に並び替えてくれるので、見落としもなく安心して調査ができます。
J-PlatPatのヒット件数がどんどん引き上げられてきていますが、そのうち人手で確認することが難しくなってくると思いますので、これまで以上に効果を実感できるようになると思います。
(取材日:2025年2月13日)