ダイキン工業株式会社
AI・DXで知財業務を革新!TM-RoBo導入で効率と精神的負担を大幅軽減
はじめに
ダイキン工業様は、会社全体でDX・AI化を積極的に推進しており、その波は知的財産部門にも及んでいます。
特に商標調査業務においては、TM-RoBoを導入することで、効率化と担当者の精神的負担軽減を同時に実現されておられます。
今回は、ダイキン工業様のAI・DX推進の取り組みと、TM-RoBo導入の背景、そして具体的な効果について詳しくお話を伺いました。

ダイキン工業様のAI・DX推進戦略
(IP-RoBo)ダイキン工業様では、AIやDX化に関してどのような考えをお持ちですか?
(西村)会社として、DX、AIに積極的な方向性です。2017年には社内でDX、AI人材を育成するため、「ダイキン情報技術大学」を設立し、2025年度末までに2,000人を育成する目標を掲げてあらゆる年代や職務にあわせた授業を行っています。この取り組みもあり、社内でもDXやAIの活用意欲が高いと感じています。
(IP-RoBo)ダイキン情報技術大学では具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?
(西村)毎年、新入社員の中から100名近くを入学させ、2年間学習してもらいます。1年目は座学で知識を習得し、その知識を活かして2年目には各部署に仮配属され、具体的な課題解決に取り組みます。
(宮田)出身学部に関わらず、機械、化学、電子機器、システム系など技術分野を隔てなく、IT、DXを中心に研修を受けてもらい、そういった人材を育成しています。
(IP-RoBo)知財部への配属はありますか?
(宮田)現在、知財部にも配属されています。
(IP-RoBo)知財部ではAIやDX化の取り組みを通じて、何か変化はありましたか?
(宮田)まだまだ道半ばですが、DXに長けた人材が配属されたことで、我々側の知識不足と提案力不足を補完してもらっています。情報技術大学の卒業生が社内でツールを開発するなど、積極的なチャレンジも行われています。
部長からも「効率化をもっとできるのではないか」と常に言われますし、全社的に効率化に取り組む機会を多く設けています。

TM-RoBo導入前の知財業務と課題
(IP-RoBo)TM-RoBo導入前は、商標調査にどのようなツールを使用されていましたか?
(西村)国内商標の文字調査には、主に機械的に数文字違いの商標を検索してリスト化するだけのデータベースを利用して社内で対応していました。J-PlatPatを併用している部員もいたようです。
図形調査は外部に依頼していました。
(IP-RoBo)従来の商標調査フローはどのようなものだったのですか?
(西村)従来のフローは以下の通りです。
1. 事業部から商標調査依頼書が知財部に提出される。
2. 上長が決裁し、商標調査の要否を判断(識別力がない、先行商標があるなどの場合は再確認を依頼することもある)。
3. 事業部と打ち合わせを行い、具体的な調査範囲(指定商品・役務)を決定。
4. その範囲で商標調査を実施し、識別力を含めた登録可能性を評価。
5. 回答書を作成し、上長決裁後、事業部に回答。
この一連の流れは、依頼から回答まで約1週間で完了させていました。
(IP-RoBo)商標調査に関しては、TM-RoBo導入前にどのような課題を感じていましたか?
(西村)主な課題は以下の3点でした。
・時間的負担:時期によっては人手が足りなくなり、他の業務が多い中で商標調査に時間を割くのが大変でした。
・精神的負担:従来のツールでは、類似する可能性のあるものがアルゴリズムで出力されるだけで、数万件に上るヒット件数を全て見ていくのは精神的に大きな負担でした。
・教育の難しさ:新入社員が一人で商標調査ができるようになるまでには、数年単位の時間がかかり、教育が難しいと感じていました。
TM-RoBo導入の決め手
(IP-RoBo)TM-RoBoを知ったきっかけと、導入の決め手は何でしたか?
(宮田)2年ほど前、特許情報フェアに御社が出展されていた際に、商標調査の効率化という課題を持っていたため関心を持ちました。
(西村)一番のポイントは、トライアルで結合商標調査に対応できる点を見て、「使えるかもしれない」と感じたことです。結合商標調査に対応しているツールはTM-RoBoだけだと認識しています。
また、TM-RoBoを使えば、時間削減効果はもちろんですが、さらに、国内商標調査に割く精神的な負担が軽減される点が非常に大きいと感じたことも決め手になりました。

(IP-RoBo)導入前にトライアルを実施していただきましたが、どのような点を重視して検証されましたか?
(西村)主に「正確性」と「判断根拠の分かりやすさ」を重視しました。具体的には、生成AIで作成した空調関係の商標15件について、TM-RoBoでの調査と人の手による従来の調査を比較検証しました。
(IP-RoBo)比較検証の結果はいかがでしたか?
(西村)15件の比較の結果、従来方法で人が「登録できる可能性が低い」または「侵害の可能性が高い」と判断されたものは、TM-RoBoの数値も低く表示され、同様の結果を示していました。人が登録可能性が高いとされたものに対し、TM-RoBoでは若干低めに出たものが3~4件ありましたが、厳しめの数値であればむしろ事故にはなりにくいので、問題ないと判断しました。
(IP-RoBo)費用対効果はいかがでしたか?
(西村)従来1時間程度かかっていた調査が、TM-RoBoでは約10分程度で完了することが判明し、時間短縮効果も大きいことが分かりました。当社の商標調査件数が極端に多くないため工数削減効果は限定的と見ていましたが、精神的な負担の軽減が非常に大きいと判断しました。提示された料金プランもリーズナブルで、リプレイス費用もわずかな上昇に留まった点も決め手となりました。

TM-RoBo活用の効果
(IP-RoBo)現在、TM-RoBoはどのように活用されていますか?
(西村)知財部では国内全ての文字商標調査をTM-RoBoで行っています。主に商標検索機能を活用しています。
(IP-RoBo)TM-RoBo導入後、商標調査の方法やフローに変化はありましたか?
(西村)TM-RoBoは従来のフローにうまくマッチしていましたので大きな変化はなくて済みました。TM-RoBoの結果を付けて事業部へ回答しています。
(IP-RoBo)TM-RoBoの各種指標はどのように活用されていますか?
(西村)総合評価である「TMS」を基本に判断していますが、それに加えて「語力統計指標」「TMC」「TMR」といった詳細な指標も確認しています。
各指標に対する当社の具体的な判断方法は下記のようにしています。
● 語力統計指標(識別力に関連する指標)で違和感がある場合は人の目で調整し、その結果出力されるTMC(要部認定の可能性に関する指標)を確認しています。
● TMR(称呼の類似度に関連する指標)を見て、本当に近しいものが上位に表示されているかを確認し、最終的なTMS(総合指標)が妥当か総合的に判断しています。
● 90%以上のTMSは問題なしと判断し、40〜60%のものは詳細な根拠を確認、それ以下は完全同一の先行商標があるものとして判断しています。
(IP-RoBo)TM-RoBo導入後、拒絶や侵害警告などのミスは発生していませんか?
(西村)TM-RoBoの各種指標の数値に違和感を持つことはほとんどありません。拒絶を受けるべきものには拒絶が来ており、期待通りの動きをしています。
(IP-RoBo)TM-RoBoの導入によって、具体的にどのような効果がありましたか?
(西村)最も大きいのは、精神的・心理的負担の軽減です。1000件近くの先行商標を1件1件判断していく作業がなくなり、これは非常に大きいと感じています。
また、各指標がパーセンテージで示されるため、判断の根拠が明確で上長への説明も容易になりました。
従来のやり方では1件1時間かかっていた調査が、TM-RoBoだと約10分で完了し、約6倍の効率化が実現しました。

(IP-RoBo)効率化により浮いた時間はどのように活用されていますか?
(西村)浮いた時間は、外国出願や模倣品対策といった他の多岐にわたる業務に充てています。これにより、これまで国内調査の質を十分に高められなかった部分が、時間の余裕ができたことで、より質の高い回答を返せるようになったと感じています。
(IP-RoBo)そのほかに導入による効果はありますか?
(西村)TM-RoBoは人間の判断過程をなぞっているため、なぜその結果になるのかを紐解いて教えることで、新入社員の審査理解にも繋がり、教育にも活用できると考えています。
TM-RoBoの今後に期待すること
(IP-RoBo)今後のTM-RoBoに対する期待はありますか?
(西村)私は、以下の3つを期待しています。
・語力統計指標の改善:語力統計指標で違和感のある数値が出ることがあるため、その改善を期待しています。
・識別力判断機能:識別力が商標全体としてあるかどうかが正確に出せれば、事業部での一次チェックに繋げられると考えています。
・海外商標調査への対応:外国の商標調査には非常にニーズがあるため、対応を期待しています。
(宮田)私も、国内だけでなく、海外についても同様のツールがあれば、費用や時間の削減が大幅にできると期待しています。

導入を検討される方に
(IP-RoBo)TM-RoBoの導入を検討している企業へのアドバイスはありますか?
(西村)「TMS」や「TMR」といった指標は最初は分かりにくいかもしれませんが、一度理解すれば、結合商標について人間と同じような判断過程を経ていることが分かり、判断の根拠となる数値も明確なので、非常に有用性が高いことに気づくと思います。短いトライアル期間であっても、積極的に質問し、数値の意味をしっかり理解した上で検討されることをお勧めします。
取材日:2025年6月16日
今回のインタビューでは、DX・AI人材を育成するため、「ダイキン情報技術大学」という自前の大学を設立されたダイキン工業様が、商標調査にTM-RoBoの導入について、具体的なお話を聞かせていただきました。
特に、結合商標対応していること、精神的負担が軽減することが決め手となり、導入後は調査時間を約6倍に効率化し、浮いた時間を他業務へ充て質的向上も図られているというお話は非常に参考になりました。
ダイキン工業株式会社の皆様、貴重なお時間をありがとうございました。
今後もTM-RoBoを導入されているユーザ様にインタビューを行う予定です。
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