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コラム

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春の英国便り

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※この記事は2021年3月に公開されたものを再編集しています。内容が現在と一部異なる場合がありますのでご注意ください。


みなさま、ご無沙汰しております。弁護士の南かおりです。
1月の自己紹介以降、初の本編です。

日本では今年は桜の開花が早かった様子、今年は例年とは様子の違う春をお過ごしのことと存じます。

英国ではただでさえ暗くて雨続きの長い冬なのですが、今年は例年より気温が低い日が多く、オックスフォードでも珍しく氷点下の気温が続き、噴水が完全に凍り付くような寒さの厳しい冬でした。加えてロックダウンが長引き、多くの人が例年にも増して憂鬱な気分で冬を過ごしてこられたようです。



それでも、英国南部ではようやく2週間前あたりから春の到来が感じられ、公園ではスノードロップやクロッカスの花が満開になっています。また、先日ロックダウンの段階的緩和が発表され、ようやく学校および大学が再開、異なる世帯に属する2名が屋外で会うことが許されるようになりました。3月末までには、異なる世帯に属する6名までの人が屋外で会うことが可能になります。

 

さて、ロックダウンの段階的緩和以外に今月メディアの注目を集めているのは、サセックス公爵および公爵夫人(ヘンリー王子およびメーガン夫人)の、米国テレビ局によるインタビュー特別番組です。

そのサセックス公爵夫妻は、ちょうど一年くらい前に商標出願をめぐって様々なニュースで取り上げられました。同公爵夫妻は、2019年6月21日、英国知的財産庁に対して、自らの財団を権利者として、標準文字「SUSSEX ROYAL」および「SUSSEX ROYAL THE FOUNDATION OF THE DUKE AND DUCHESS OF SUSSEX」の商標登録出願を行いました。いずれの商標出願も、16,25,35,36,41、および45類を指定商品・役務としており、慈善活動キャンペーンの宣伝広告(35類)、慈善募金活動(36類)、および知的財産のライセンス(45類)などが含まれます。

 

王室またはその関連団体は、バッキンガム宮殿、ケンジントン宮殿、ウインザー城等の宮殿や王族所有不動産の名称、または自らが後援者を務める慈善団体の名称などの多くの商標登録を有しています(例:ケンブリッジ公爵夫妻の慈善団体が有する商標登録)。したがって、王室や王族が何らかの商標登録を行うこと自体は、何ら珍しいことではありません。しかし、サセックス公爵夫妻の財団による商標出願に対しては、多数のNotice of Threatened Opposition(予備的異議申立)なされました(「SUSSEX ROYAL」に対しては14件)。Notice of Threatened Oppositionは、異議申し立てを行う意思を通知することにより、正式な異議申し立ての期限の一か月延長を得る制度です。商標の専門家の間では、類似の先行登録商標の存在なども指摘され、異議審査の行く末にも興味が注がれていました。「SUSSEX」はサセックス州を示す地名であり、実際、おびただしい数の同単語を含む結合商標が登録・出願されています。

 

しかし、結局、2020年1月にサセックス公爵夫妻が王室の公務から退く意思を示した後、両出願とも取り下げられました(2020年2月25日付)。サセックス公爵夫妻の公式ウェブサイトによると、「Royal」の語の使用方法に関する規則に基づき取り下げることを決めた、と説明されているところ、女王が同公爵夫妻に対して、これらの商標出願の取り下げを指示したとの憶測が広く報道されました。英国の商標法上は、一般人が、王族の後援または承認を示すと考える可能性ある文字を含む商標登録は、女王または王室メンバーの同意ない限り認められないのです(1994年商標法第4条)。王室からの公式説明はないため事実は定かではありませんが、公務から退くサセックス公爵夫妻が「Royal」の語句を使用してビジネスを行うことに対して、懸念があったとしても不思議ではありません。

 

今回は、日本でもメディアで取りあえげられることの多いロイヤル事情に関して、商標の側面に着目したニュースをお届けしました。
次回の英国便りでも、現地のホットなニュースをお届けいたします。

 

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[Profile]
南かおり

弁護士(日本、英国イングランド&ウェールズ、米国カリフォルニア州)

<経歴>
慶応義塾大学 法学学士
慶応義塾大学 法学修士
ロンドン大学クイーンメアリー校 LLM(知的財産法)

日本で弁護士として約5年法律事務所に勤務し、商標その他の知的財産案件に携わった後、LLM留学のために渡英。
英国では、法律事務所および英国企業の本社の企業内弁護士として商標をはじめ知的財産権および一般の契約審査等の実務を経験し、
現在は企業内弁護士としての職務と並行して、英国またはEU所在の日本企業に対して英国法または日本法の法的アドバイスや、社内の業務フローの相談などにも対応している。

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