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™マーク、Ⓡマーク、©マーク、℠マークの違いとは?登録商標記号の意味を解説

商標や著作権などを示す「™マーク」「Ⓡマーク」「Ⓒマーク」「℠マーク」。それぞれの意味や役割を、正しく理解しているでしょうか?
これらの記号は、知的財産権の保護において重要な役割を果たします。特に製造業では、ブランドの信頼性を高め、知的財産権を守るために、商標戦略の一環として適正な利用が求められます。
企業のグローバル展開が進むなか、海外市場での商標トラブルを避けるためにも、これらの記号の理解が欠かせません。
そこで本記事では、それぞれの記号の意味と違いを詳しく解説し、企業がどのように活用すべきかをご紹介します。
<目次>
™マークとは?
▲国際オリンピック委員会から引用(https://www.olympics.com/ja/olympic-games/tokyo-2020/logo-design)
™マーク(Trade Markの略)は、企業が特定の商品やブランド名に対して「商標」として主張する際に使用される記号です。特に、商標登録が完了するまでの期間や、特定の市場での認知度を向上させるために用いられます。
なお、日本においては、™マーク自体には法的な効力はなく、商標登録を受けていない商標にも使用することができます。
™マークの特徴
登録不要で使用可能
™マークは、自社の商品・サービスに対して「商標として使用している」ことを示すものであり、商標登録を受けていない商品やブランドでも使用できます。
たとえば新規ブランドの立ち上げ時に、商標登録申請中の段階で™マークを併記することで、競合他社への牽制やブランドの認知度向上につながります。
法的保護は限定的
™マーク自体には、法的拘束力がありません。そのため、他社が同じブランド名を使っても商標権の侵害を主張することはできません。 ただし、長期間使用し市場で広く認知された場合には、不正競争防止法などにより一定の保護が認められるケースもあります。
主にアメリカやイギリスで使用
アメリカやイギリスなどでは、商標登録前の段階で™マークが広く使われています。 日本でも近年は、外資系企業が展開するブランドや国際展開を見据えた企業が、™マークを使用する例が増えています。
Ⓡマークとは?
▲日本マクドナルドホールディングスから引用(https://www.mcdonalds.co.jp/family/happyset/)
Ⓡマークは「Registered Trademark(登録商標)」の略で、正式に商標登録されたことを示す記号です。
Ⓡマークを付けた登録商標は法的な商標権によって保護されており、第三者が無断で使用した場合には商標権侵害として法的措置を取ることができます。
Ⓡマークは、特に海外市場において商標権の確立とブランドの信頼性向上に役立ちます。グローバル展開を検討している企業は、商標登録を行い、Ⓡマークを適切に使用することが不可欠です。
Ⓡマークの特徴
商標登録が完了した証
Ⓡマークは、特許庁で正式に商標登録が完了した商標のみが使用できます。登録が完了していない状態でⓇマークを付けるのは違法行為にあたるため、注意が必要です。
強力な法的保護
Ⓡマークを付けたことによる直接の効果ではありませんが、商標登録を行うことで、以下のような法的保護が得られます。
■独占使用権
登録商標は、商標権者のみが使用できます。他社が無断で使用した場合には、商標権侵害として差止請求や損害賠償請求が可能です。
■第三者による類似商標の使用を防止
競合他社が類似する商標を登録しようとした場合、拒絶される可能性が高まります。
■ブランド価値の向上
商標登録済みを示すことで、顧客や取引先にブランドの信頼性を示せます。
海外でも一般的に使用
Ⓡマークは日本だけでなく、アメリカ・ヨーロッパ・アジア各国でも広く使用されています。 アメリカでは、Ⓡマークを付けないと商標権の行使が制限される場合もあるため、海外進出を考える企業では適切な使用が求められます。
Ⓡマークの使用条件
項目 | 説明 |
商標登録の必要性 | 必須(特許庁の商標登録が完了した場合のみ使用可) |
法的保護 | あり(商標登録の効果として商標権により保護される) |
使用範囲 | 登録のされている指定商品・役務の製品やサービスに適用可能 |
違反時のリスク | 未登録の商標にⓇを付けると虚偽表示となり罰則の対象になる可能性あり |
©マークとは?
▲ドラえもん公式サイトから引用(https://dora-world.com/)
©マークは「Copyright(著作権)」の略で、著作物が著作権法によって保護されていることを示す記号です。
日本では、作品が創作された時点で著作権が自動的に発生するため、©マークの有無にかかわらず著作権が適用されます。
ただ、©マークを付けることで「著作権が存在すること」を明示でき、無断使用を防ぐ効果があります。
©マークの特徴
商標ではなく著作権の証明
©マークは、商標権とは無関係で、著作権のあるコンテンツを保護するためのものです。 書籍、Webサイト、ソフトウェア、音楽、映像、デザインなどに使用されます。
登録不要で自動的に適用
著作権は創作と同時に発生するため、©マークの使用にあたって特許庁やほかの機関に登録する必要はありません。 ただし、著作権を確実に主張するために、著作権登録制度を利用するケースもあります。
法的効力と注意点
©マークがなくても著作権は発生するため、マークの記載がないからといって自由に使用できるわけではありません。 ただし、©マークを付けることで著作権が存在することを明確に示せるため、第三者による無断使用や著作権侵害を抑止する効果があります。
©マークの使用方法
著作物に©マークを付ける場合、以下の3つの要素を併記するのが一般的です。
© [制作年][著作権者名]
例:© 2024 ABC Corporation. All rights reserved.
℠マークとは?
▲River City Bankから引用(https://rivercitybank.com/)
℠マークは「Service Mark(サービスマーク)」の略で、サービスに関連する商標を示す記号です。
™マークは主に商品(モノ)に使われるのに対し、℠マークは無形のサービスに対して使用されます。
ただ、日本では商標法のもとで「役務(サービス)」も商標として登録されるため、™マークと区別せずに使用するケースが一般的です。
℠マークの特徴
サービスに特化したマーク
℠マークは、無形のサービスに適用されます。一般的にコンサルティング、金融、教育、ITサービス、医療、エンターテインメントなどの分野で使用されることが多いです。
登録不要で自由に使用可能
™マークと同様に、商標登録をしなくても使えます。なお、法的な商標保護を受けるには、商標登録を行い、Ⓡマークを付けられるようにする必要があります。
国際的に見ると、主にアメリカで使用
日本では、サービス商標も「商標」の一部として扱われるため、℠マークはほとんど使われません。 一方、アメリカでは「商品」と「サービス」を明確に区別する目的で、℠マークが利用されます。
℠マークの使用例
業種 | ℠マークの使用例 |
ITサービス | クラウドサービスやSaaSプラットフォーム |
コンサルティング | 企業向け経営戦略・マーケティング支援 |
金融・保険業 | オンライン決済システム、保険代理サービス |
教育業 | オンライン学習プラットフォーム、研修サービス |
医療・福祉 | 遠隔医療サービス、訪問看護 |
エンターテインメント | 映画配信サービス、ストリーミング音楽サービス |
たとえば、「ABC Consulting ℠」のように、企業のコンサルティングサービスに℠マークを付けることで、その名称が「サービスに関連する商標」であることを示せます。
各記号の使い方と企業戦略
「™マーク」「Ⓡマーク」「©マーク」「℠マーク」は、企業のブランド戦略において重要な役割を果たします。海外市場でのブランド保護、日本国内での適切な商標登録、企業ブランディング戦略の一環としての活用は、知的財産を守る上で欠かせません。
海外市場における商標記号の活用、日本国内での商標登録の重要性、企業ブランディングの視点からの適正使用について解説します。
海外市場での商標記号の活用
商標記号の国際的な位置付け
商標の保護は国によって異なるため、海外展開を考える企業では、それぞれの市場に応じた記号の活用が必要です。
■アメリカ・カナダ
- ™マーク:商標登録を申請する前の段階でも使用可能です。
- Ⓡマーク:商標登録完了後のみ使用可。未登録の商標に付けると罰則の対象になる可能性があります。
- ℠マーク:役務(サービス)に対して使用します。
■ヨーロッパ(EU加盟国)
商標は、EUIPO(欧州連合知的財産庁)で登録可能です。Ⓡマークは、登録後の使用が必須ではありませんが、知的財産の主張を強化するために使われます。
■中国・アジア市場
中国は「先願主義」を採用しており、最初に商標登録した企業が権利を得ます。商標を使用する前に登録が必要です。 なお、商標のコピー被害が多いため商標記号(™、Ⓡ)を適切に活用し、ブランドの法的保護を強化する必要があります。
海外での商標登録のポイント
■現地での商標登録を早目に行う
特に中国では、未登録の商標が第三者に先に登録されるリスクが高いため、事前登録が必須です。
■国際商標登録制度(マドリッド制度)の活用
WIPO(世界知的所有権機関)を通じて一度の出願で複数国に商標登録が可能です。これにより、費用や手続きの手間を削減できます。
■商標記号の適正な使用
アメリカでは、未登録の商標にⓇマークを付けることは違法です。™や℠マークは、商標登録前にブランディング目的で使用可能です。
日本国内における商標登録の重要性
日本の商標制度の概要
日本では、特許庁に登録された商標のみが法的に保護されます。商標登録を行うことで、他社による類似商標の使用を防ぐことが可能です。
なお、™マーク、℠マーク、Ⓡマークの各マークの使用義務はありませんが、商標登録が完了すればⓇマークの使用が推奨されることがあります。
商標登録のメリット
メリット | 内容 |
法的保護 | 商標登録により、他社が同じブランド名を使用することを防げる。 |
ブランド価値の向上 | 商標登録があることで、消費者や取引先に信頼性をアピールできる。 |
競争優位性の確立 | 競合他社が類似ブランド名を使うリスクを減らせる。 |
資産価値の向上 | 商標は企業の知的財産として扱われ、事業売却やライセンス契約の際に有利になる。 |
商標登録の流れ
■事前調査
J-PlatPat等の商標検索ツールを利用して、類似商標の有無を確認します。
TM-RoBoのような最先端のAI商標検索ツールを活用すると、効率的かつ正確に類似商標を確認することが期待できます。
■商標出願
特許庁に商標出願します。
商標の区分や指定商品・役務(どの分野で使用するか)を適切に選定することが重要です。
■審査・登録
約6~12カ月の審査期間を経て、問題なければ商標登録されます。
商標登録完了後にⓇマークが使用可能となります。
■更新管理
商標の有効期限は10年です。
期限切れを防ぐため、商標管理ツールで更新時期を自動管理するのがおすすめです。
まとめ
™マーク、Ⓡマーク、©マーク、℠マークは、それぞれ異なる目的で使用され、企業の知的財産戦略において重要な役割を果たします。 特に日本国内の製造業では、これらの記号を適切に使用することで知的財産を最大限に活用し、競争力のあるブランドを築くことが可能になります。
今後のブランド戦略の強化に向けて、商標記号の正しい理解と活用を進めましょう。
IP-RoBo広報部
執筆日:6月25日